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ENGLISH ホーム 経団連について Policy(提言・報告書) Action(活動) 会長コメント/スピーチ トップ Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業 日本産業の再飛躍へ Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業 日本産業の再飛躍へ ~長期戦略にもとづく産業基盤強化を求める~ 2024年4月16日 一般社団法人 日本経済団体連合会 はじめに 過去30年間の長期低迷を続けた日本経済は、足元、物価と賃金が上昇し始め、設備投資は名目ベースで約99兆円(2023年)と過去最高水準で推移するなど、歴史的転換点を迎えている。モノづくりや省エネ・リサイクルなどの技術に対する世界からの期待は高く、豊かな自然に恵まれ、平和で安全な社会が保たれ、日本発の漫画・アニメや食などが世界的なブームを起こすなど、日本には世界中の人々を惹きつける魅力にあふれている。また、地政学リスクの高まりや安全保障をめぐるグローバルな環境変化を背景に経済安全保障の重要性が認識されるとともに、世界経済が分断の危機に直面する中、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けてわが国が果たすべき役割への期待は大きい。 他方、わが国の構造的な課題に目を向けると、決して将来を楽観視できる状況にはない。世界のGDPに占める日本の割合は大きく低下し、2023年版のIMD「世界競争力ランキング」によれば、かつて1位だった日本の競争力は35位と過去最低を更新した。少子高齢化・人口減少が急速に進んだことで、内需は縮小し、人手不足が深刻化し、一人当たり労働生産性も停滞するなど、社会課題が山積している。また、気候変動問題への対応や、デジタルやバイオなどの技術進展等を背景とした、構造変革の流れにも乗り遅れている。さらに、エネルギー資源や食料はもとより、デジタルサービスや医薬品・医療機器などでも海外への依存度を高め、対外収支を圧迫することとなっている。 明暗が混在し、いわば将来への分水嶺に立つ中、今に生きる我々には、「失われた30年」に終止符を打ち、成長を未来につなぐ責務がある。30年超にわたってうずくまり続けた日本には、高く再飛躍する力が込められている。飛躍のエンジンとなるのは強い産業である。官民で長期的な産業戦略を共有し、人手不足やエネルギー問題など先送りできない課題の解決によって足元の基盤固めを行い、未来志向の挑戦によって積極的な投資を促すことが必要となる。 本提言では、以上の認識のもと、官民の英知を集めた長期的な視点での産業戦略の確立を求めるとともに、産業基盤の強化に向けて取り組むべき課題と施策を整理する。 第1章 官民連携による長期産業戦略の確立 わが国の産業競争力(日本に立地する企業のイノベーション・付加価値創出力、および日本発の企業がグローバル市場で稼ぐ力の両面)の強化に向けて、わが国の強みと、国際社会・グローバル市場におけるポジションを踏まえつつ、今後勝てる領域とそのためのシナリオ、すなわち勝ち筋を見極めて、積極的な投資と事業環境の整備を官民で進めることが重要である。 本章では、今後の日本産業の方向性を示しつつ、わが国としての統合的な長期産業戦略の策定を求める。 1.日本産業の方向性 わが国および世界が目指すべき社会像は「Society 5.0」、すなわち、複雑化する時代において、デジタルの力とあらゆる多様性の内包によって新たな価値を協創する社会である。そのためにも、「自然と人間」、「グローバルとローカル」、「集中と分散」、「リアルとデジタル」、「個と組織」といった異なる価値を包摂し、同時両立を図ることが必要である。とりわけ、わが国産業を考える上では、以下のような視点について同時両立を図ることを前提に、勝ち筋を探るべきである。 (1)課題解決と経済成長 第一に、課題解決と経済成長の両立である。 世界は、地球環境や生態系の破壊、格差の拡大・再生産など、さまざまな社会課題に直面しており、特にわが国においては、世界に先駆けて少子高齢化・人口減少が加速するなど課題が山積している。 課題先進国であるわが国は、さまざまな課題を克服しつつ、経済成長を実現するモデルとして「サステイナブルな資本主義の実践」を求められている。具体的には、グリーントランスフォーメーション(GX)・サーキュラーエコノミー(CE)・ネイチャーポジティブ(NP)の一体的な推進や、デジタルトランスフォーメーション(DX)、さらにはバイオトランスフォーメーション(BX)といった構造転換を通じて、社会課題を解決しつつ、持続的な経済成長を実現することが重要である。 とりわけ、地球環境問題が深刻化し、地政学的リスクが増大する中で、経済成長を実現するためには、エネルギー安全保障の強化が最も重要な課題である。再生可能エネルギーの制約と限界も顕在化する中、日本産業の再飛躍に向けては、国が前面に立って原子力発電所の早期再稼働や高温ガス炉・高速炉を含む革新炉のリプレース・新設を進める等、原子力の最大限の活用を進めなければならない。 (2)外需取り込みと内需創造 第二に、外需取り込みと内需創造の両立である。従来進めてきたグローバル化への対応と合わせて、国内投資の拡大による内需の創造が重要であり、両者のバランスを取りながらわが国産業の競争力強化を目指すべきである。 過去、製造業をはじめとする日本企業は、グローバル化の波に乗り、成長の機会を求めて海外へ進出し、海外売上高比率を高めてきた。生産についても需要地での現地生産を行う「地産地消」を拡大するなど、海外への投資を加速し、得られた収益を現地へ再投資することでさらなる成長につなげてきた。今後も、国内で人口減少等が進む中で、国内市場だけに依拠することには限界があり、グローバル展開によって海外市場の成長を取り込むことが不可欠である。特に東南アジアやインドをはじめ経済成長著しいグローバルサウスの存在感が高まる中で、それら各国・地域が抱える社会課題に対して解決策を提供し、ともに価値創出を進めることとで、その成長を取り込むことが重要である。その際、欧米をはじめとする価値観を共有する国・地域と協調して国際ルールの形成を主導し、課題解決と経済成長を両立するモデルを作ることが重要である。また、欧米と協調するだけでなく、わが国独自の強みや立ち位置を認識した上で、戦略的にルール形成を行う視点も欠かせない。 一方、個々の企業の合理的な判断によって旺盛な海外需要に対して投資を進めた結果、日本経済全体としては国内投資が抑制され、長期停滞の一因となったことは否めない。わが国経済の「成長と分配の好循環」の実現には、国内投資の拡大によって産業競争力・価値創出力を向上させ、わが国の経済社会を支えるエッセンシャルワーカーなどの良質な雇用の確保と構造的な賃金引上げによって分厚い中間層を形成することで、内需を創造し、次の成長機会を創出する好循環が欠かせない。また、経済安全保障の確保に資するサプライチェーンの強靱化という観点からも、国内の産業基盤強化を通じて事業活動を継続・拡大できる環境を整備するとともに、戦略的不可欠性を確保すべきである。そして、国内で磨き上げた研究開発や社会実装の成果をグローバルに展開し、海外での収益を伸ばし、それをさらに国内投資へと還流することが重要である。 この点、「半導体・デジタル産業戦略」にもとづく台湾積体電路製造(TSMC)の誘致や、先端半導体の国産化を目指すRapidus(ラピダス)の設立などは、半導体に係る安定供給確保を図るだけではなく、地域や関連産業への経済波及効果をもたらすなど国内に新たな需要を創出することとなっている。このように、最先端の最終製品・サービスを起点に国内の新たな需要を喚起すべく、外資の誘致も含めて官民の投資を積極的に進めることが肝要である。 (3)高付加価値化と省人化・省力化 第三に、高付加価値化と省人化・省力化の両立である。 米国・中国・欧州のように巨大な国内・域内市場を有していないわが国が、スケールメリットを生かした単純なコスト低減によるコモディティの展開等で将来にわたってグローバル競争に勝ち続けていくことは困難である。わが国としては、イノベーションを軸とした高付加価値(スペシャリティ)産業の強化に大きく舵を切り、産業構造の転換を図るべきである。そのためには、先端技術の研究開発・実装や、次代を担うスタートアップの創出、博士をはじめとする高度人材の育成・活躍など、付加価値の高い領域へと投入資源をシフトするとともに、生産性の低い企業の退出の促進なども含めて新陳代謝の促進を図ることも不可欠である。 国内において人手不足が成長の足かせとなる中、労働集約型産業を中心にあらゆる分野において省人化・省力化は喫緊の課題であり、その対応に大きな需要が創出される。省人化・省力化の需要増を好機と捉え、社会のあらゆる場面でAIやロボットなどのデジタル技術を導入し、徹底的な省人化・省力化を図るべきである。限られた人的なリソースは、AI等も活用しつつ高付加価値を生み出す領域等での活躍を促していくことが望まれる。また、省人化・省力化を図りながらも、デジタル化が困難とされる職人の技や勘・ノウハウなどを伝承し価値を高めることが重要であり、高い専門技能に対する評価・育成の仕組みを整備すべきである。 (4)全体最適 最後に、あらゆる部分最適の矛盾を乗り越え、両立を図る全体最適の視点である。 解決すべき社会的な課題が複雑化する中で、特定の組織や分野、業界、所管官庁といった個別の論理や事情にもとづく取り組みでは限界や矛盾が生じるため、全体最適を図る視点がより重要となる。たとえば、先ほど述べた通り人口減少に対応するためにはデジタル技術の活用が不可欠であるが、その開発・利用には膨大な電力を使用するため、半導体工場やデータセンターなどが国内のどこに立地するか、それを支えるエネルギー供給基盤の立地はどうするかといった点もあわせて考えなければならない。また、そうした産業立地の方針を踏まえて、少子高齢化等の課題が進む中での地域や国土のあり方、教育・人材育成の体制を整える必要がある。さらには、少子高齢化によって医療・介護給付費が増大する中で、公的保険の外縁部を形成するヘルスケア産業をどう振興するかもセットで考えなければならない問題である。このような領域をまたぐ課題について、相互の関連も含めた全体最適の視点からわが国の産業のあり方について議論することが重要である。 2.「産業戦略2040」の策定 日本が歴史的な転換点に立つ今、若者が未来に希望を持って挑戦し、新たな時代を切り拓くための指針として、中長期的な未来を見据えた産業戦略が必要である。 現在、わが国では「経済産業政策の新機軸」をはじめ、「GX実現に向けた基本方針」、「統合イノベーション戦略」、「半導体・デジタル産業戦略」、「エネルギー基本計画」、「水素基本戦略」、「スタートアップ育成5か年計画」、「国土形成計画」など各分野の短中期的な戦略や計画が策定されているものの、わが国産業全体を見据えた長期的かつ統合的な産業戦略は確立されていない。複雑性などが増すVUCA#1時代において、産業分野や課題、省庁の所管ごとの個別の理論で短期的な最適解を求めていては、真の課題解決を図ることは困難であり、先に述べた通り全体最適の視点が不可欠である。 「わが国の国益とは何か」、「次世代にどのような社会を残すか」、「国民の生活はどのように変化するのか」、「技術進展が進む中での人間の役割は」、「過去30年において産業競争力を失った原因は何か」、「わが国のどのような強みを活かして今後どう立ち回るか」、「国として長期的にどの産業でどのように稼いでいくのか」、「必要となる技術は」、「長期的なエネルギー需要はどうなるか」、「産業やエネルギー源は国土の中でどこに立地するのが最適か」、「担い手となる企業をどう伸ばすか」、「求められる人材をいかに育成するか」、「資金や人材など限られた資源の投資先はどこか」、「どのような経済外交を展開するか」などといった課題に対して、国民のコンセンサス形成を図りつつ、定性・定量の両面で長期的な方向性とロードマップを明確化しなければならない。 このような課題認識のもと、次世代を担う若い人材も含めた産学官による集中的な議論を通じて、2040年頃をターゲットにした「産業戦略2040(仮)」を国として策定することを政府に求める。そして、同戦略にもとづき、わが国の構造的な課題解決に向けた長期的な産業戦略を明確化し、産業基盤の強化に向けた投資の指針とすべきである。これは官主導による従来型の産業政策を求めるものではなく、産学官の役割分担と緊密な連携による新たな時代への産業戦略の展開と、その推進体制の構築を求めるものである。あくまで成長の主役はスタートアップをはじめとする民間企業であり、官もリスクをとりながら、若者をはじめ民間の主体が日本の未来に希望を持って積極的に挑戦し投資できる機会と環境を整備する視点が不可欠である。 また、産業戦略の策定にあたって、戦略的不可欠性、社会課題解決、世界市場の成長期待、ユニークな日本の優位性、波及効果の大きさといった観点から、わが国の今後の勝ち筋として期待できる戦略分野#2やムーンショット目標を国として定め、人材育成も含めて官民での積極的な投資を行うことも一案である。その際には、前述の通り、各分野にとじた戦略ではなく、その連関による全体最適の視点での取り組みが欠かせない。 経済界としても長期的な目線で積極的な挑戦を進めるとともに、産業戦略の策定に向けた議論への参画や提言等を行っていく。 第2章 産業基盤強化に向けた具体的施策 わが国の長期的な産業競争力強化に向けては、横断的な課題を解決し、国内投資の拡大によって産業基盤の強化を図ることが重要である。特にわが国が抱える最も深刻な課題は、人口減少の加速を背景とした人手不足であり、その解消にはAIやロボットなどのデジタル技術の活用が有効である。世界市場を牽引しているのもデジタル技術であり、その競争力確保に向けた基盤強化は最重要課題である。同時に、デジタル化は電力を消費することから、S+3E(安全性+安定供給・経済効率性・環境適合)を満たすエネルギーの供給体制、特に原子力の最大限の活用が必要不可欠である。 本章では、デジタルとエネルギーに重点を置きつつ、国内投資拡大による産業基盤強化に向けて短期・中長期で取り組むべき具体的施策を提言する。これらの課題や施策について、今後の政府方針や策定を求めている長期産業戦略に反映させるべきである。 1.国内投資促進/法制度・規制 (1)国内投資促進 産業基盤強化の前提として、戦略分野に対する有形資産投資(設備投資等)や無形資産投資(人的投資、研究開発投資、デジタル化等)を中心とした官民連携による国内投資の拡大を起点に、高付加価値の財やサービスの提供によって生産性を向上させ、さらなる投資につなげることが重要である。設備投資については、経団連が掲げた「2027年度 民間設備投資額(名目)115兆円」という目標に向けて、企業の前向きな挑戦と投資を促すべく、官民連携で具体的な取り組みを進めることが肝要である。 現在、グローバル経済における主要各国・各地域は積極的な産業政策を展開しており、わが国としても、長期戦略にもとづく計画的な投資促進策は急務である。その際、市場メカニズムが働かずに発生する環境問題や社会問題などの「市場の失敗」に対応しつつ、政府の市場介入によって効率的な資源配分が損なわれる「政府の失敗」も避けなければならない。民間のみでは実現困難な分野等に対し、複数年にわたって政府が財政支出をコミットすることで官が呼び水となって、持続的な民間の投資を促すべきである。 今後は、長期的な産業戦略にもとづく全体最適の視点から、長期かつ複数年度にわたる予算措置を講じるとともに、府省の枠を越えた施策の推進が求められる。 また、民間企業が投資の意思決定を行う上では、資本的支出(CAPEX)と事業運営費(OPEX)に係る数値が前提であり、それらが不明確であれば国内投資の判断の重荷となる。とりわけ、電力や水素・アンモニアなどのエネルギー分野を中心に、2050年に向けた供給量・価格・支援額等の具体化に向けて継続的に取り組みを進めるべきである。 その他、具体的な施策については、「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」における「国内投資促進パッケージ」に盛り込まれた、「分野別の戦略投資」、「横断的な取り組み」、「グローバル市場を見据えた取り組み」を3つの柱とする、合計11府省庁・200強の国内投資推進策(予算、税制、規制)の積極的な活用をまずは促すべきである。その中でも、今般創設された戦略分野国内生産促進税制は、長期視点での国内設備投資の拡大を促進するとともに、GX・DXの推進や経済安全保障の確保に資するものと考えられる。使い勝手の良い制度となるよう詳細設計を進めるとともに、活用推進に向けて周知を進めるべきである。さらに、中長期的に、府省横断による施策の推進も含めて、国内投資推進策の拡充・継続が求められる。 (2)法制度・規制 デジタル技術等の急速な進展に対応し、産業構造の転換を図るべく、新技術や新規ビジネスの実装を阻害し得る法制度・規制については、スピード感をもって徹底的に見直すべきである。また、先端技術の実証実験を通じた社会実装を進める上では、国家戦略特区による地域限定型のサンドボックス制度の積極的な活用が求められる。 また、国際競争力の強化を図る上で、脱炭素などの構造転換に向けて業界再編や企業間連携を進めることが重要である。公正取引委員会は2023年3月に「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方(グリーンガイドライン)」を公表した。同ガイドラインのなかで、脱炭素に向けた共同の取り組みが許容される事例を充実させていくことを期待する。また、公正取引委員会として、企業間で共同の取り組みを行うための事前の情報交換の可否も含め、事業者からの事前相談に積極的かつ前向きに対応することが必要である。中長期的には、適正な競争環境を維持しつつも、各国との国際競争に打ち勝つ観点から、わが国の競争力強化を図るための今後の競争政策・独占禁止法のあり方について不断かつスピーディーに検討を進めることが求められる。 くわえて、2024年4月から「時間外労働の上限規制」が建設・物流業界などにも適用されることによる、いわゆる「2024年問題」は、今後国内投資を拡大する上で大きなネックとなっている。積極的な投資拡大と建設・物流等事業の持続性を両立する観点からデジタル技術の活用や異業種間の連携を前提としつつ、工期延長による事業への影響など顕在化する課題を踏まえて、あるべき姿ととるべき対応について議論を継続し、生産性向上に資する規制・制度改革や新しい仕組みの導入を図ることが必要である。 2.デジタル 世界の成長を牽引しているのはデジタルイノベーションであり、とりわけわが国においては人手不足への対応の観点からも潜在的な需要が大きく、AIやロボットを活用したDXを進めることが重要であり、その基盤強化が欠かせない。 他方、現状では、「デジタル敗戦」とも指摘されるほどに、わが国の国際的なデジタル競争力は低下しており、IMDの「世界デジタル競争力ランキング2023」では、前回調査から3つ順位を落とし、過去最低の32位を記録している。「デジタル敗戦」はコロナ禍で露呈した行政のデジタル化の遅れについて語られることが多かったが、主戦場である産業分野こそ深刻な状況であり、デジタルサービス・機器やそれを支える先端半導体等は海外への依存度が高まり、貿易・サービス収支悪化の要因となっている。デジタル化を進めるほど対外支払いが一方的に拡大する構造となっていることを直視しつつ対応を図らなければならない。官民を挙げたデジタル技術の社会実装を進めて飛躍的な生産性向上を図りつつ、わが国がデジタルで対外的に稼げるための基盤強化が必要である。 (1)産業DX 少子高齢化が他国に先行して進むわが国においては、AIやロボットなどのデジタル技術の社会実装によって産業DXを早急に進めるべきである。「AI・ロボット大国」を目指し、研究開発や積極的な活用、ルール整備・規制改革、人材育成などを産学官連携で取り組む必要がある。 製造業をはじめ、健康・医療、育児・介護、エンターテインメント・コンテンツ、物流、建設、小売、飲食、自動車・移動、防災・減災、インフラ維持などあらゆる分野においてAI・ロボットを導入し生産性向上を図ることが不可欠である。国産技術も含めたAI・ロボットの徹底的な導入推進に向けて、今後3年程度を集中投資期間として、大胆な予算や税制、規制改革などあらゆる施策を総動員すべきである。 AIやロボットの開発・利用にあたっては、わが国が強みとしてきたモノづくりや質の高いリアルの知識と掛け合わせ、融合することで価値を高める視点が重要である。こうしたハードの強みを活かしつつ、ソフトウェアへの積極的な投資・開発により、各領域における高付加価値なアプリケーション・ソリューションを国内外に提供することで、エコシステムの構築・展開に取り組むことが勝ち筋となる。とりわけ、各領域に特化したAIやエッジAI、産業用ロボットのプラットフォーム開発を主導するとともに、将来的なAGI(汎用人工知能)の進展を見据えて産学官による開発・実装を行うべきである。 目下、急速に発展している生成AIについては、官民で積極的に活用するとともに、自国での基盤モデルやサービス開発等も進めるべきである。生成AIのうち大規模言語モデル(LLM)については、日本語需要が世界的に大きくないことからグローバル市場で稼ぐことは難しいと考えられるものの、わが国として特定用途への特化など勝ち筋を見出してモデル開発を進めることが重要である。また、わが国としては、強みであるコンテンツ力を最大限に活用した、画像・動画等を生成するAIの開発に注力し、競争力向上を目指すことが重要である。知的財産等に関するエコシステム・ルール形成に向けたわが国の取り組みと戦略的に連動し、画像・動画データの学習、基盤モデルの構築を通じて「稼げるAI」を開発することが必要である。そのために、各分野のコンテンツホルダーの連携を促しつつ、産学官での推進体制を構築するとともに、海外における海賊版対策やインターネット上の著作権侵害対策等を徹底すべきである。 産業DXを支えるインフラに関しては、現在、経済産業省が、「デジタルライフライン全国総合整備計画」によるハード(通信インフラ)・ソフト(データ連携基盤・3D地図)・ルール(認定制度)の整備を進め、アーリーハーベストプロジェクトとして、ドローン航路、自動運転サービス支援道、インフラ管理DX等を進めている。こうした取り組みを迅速に全国に展開し、継続、拡大していくことが重要であり、関係省庁の連携を強め、実施体制の強化を図るべきである。 (2)計算・処理基盤 デジタル時代において、PC・スマートフォン、データセンター、自動車をはじめとするあらゆる製品に使用される基幹部品である「半導体」は必要不可欠な存在であり、経済安全保障上の重要戦略物資となっている。現在、日本企業はそのシェアを落としているが、政府の「半導体・デジタル産業戦略」にもとづきわが国の半導体産業復活に向けた基盤整備が図られているところである。今後、「製造装置」や「材料」、「パワー半導体」、「イメージセンサー」、「マイコン」、「NANDフラッシュメモリ」、といった強みも伸ばしながら、産学官連携による取り組みの加速が求められる。 特にAIの開発には、大規模なデータを扱う計算・処理基盤が必要となる。目下、最先端の生成AIなどの学習においては、最先端のAI用GPU(画像処理装置)やそれに付属する最先端DRAM技術のHBM(高帯域幅メモリー)の需要が世界中で増大しているが、それらの設計・生産は米国・韓国・台湾に主導権を握られている。各国・企業による争奪戦となる中で、わが国としても政府の後押しのもと米国等との連携を進め、官民でGPU確保を急ぐべきである。また、AI用GPU等の最先端半導体の生産に必要となる半導体装置・材料について、製品開発・設備投資等の支援により供給力を強化することが重要である。 中長期的には、経済安全保障の観点からも、AI等開発に必須となる先端ロジック半導体等について、自国での設計・製造を担えることが望ましく、政府による技術開発等の支援を長期的視点で継続するとともに、官民連携での取り組みが必要である。あわせて、最先端半導体を用いた最終製品・産業の創造を含めた生産と応用の密接な連携によるサプライチェーン強化、用地・電気・水等のインフラ整備、外国人従業員の食・居住・教育等の生活環境整備も重要である。さらに、AI開発での消費電力が増加する中で、抜本的な低消費電力化の観点から、光電融合技術等の実装・展開などによるゲームチェンジを目指し、官民での推進体制の整備が重要である。 (3)データ連携・利活用基盤 AI等のデジタルサービスの開発・利用を行う上でも、データの利活用は必須であり、官民を挙げた大規模なデータの整備・連携を推進することが求められる。その際、量(Volume)、多様性(Variety)、更新頻度(Velocity)それぞれの観点から質の高いデータを整備すべく、明確かつ包括的な方針のもとで各省庁が連携し、これまでにないスピード感を持って取り組む必要がある。 データ連携・利活用の基盤に関して、欧州では「Catena-X(カテナ-X)」や「GAIA-X(ガイア-X)」といったデータ連携のエコシステム形成への取り組みが進んでいる。日本でも「Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)」や「DATA-EX」のもと官民でデータの標準化およびデータ基盤の連結・共通化を進められているところ、日本全体として医療データや国・地方自治体の保有するデータ等の連携・利活用を検討し、欧米などと相互運用性の確保やASEAN等とデータ連携に関する仲間作りを行うことが重要である。 他方、広くオープンに共有すべきデータと、企業の経営戦略上クローズにするデータの戦略的な使い分けについて、企業が決定できるデータ主権を担保することも重要である。 なお、データ連携・分析による価値創造にはリアルタイム性や、秘密計算技術のように秘匿性を確保したまま情報の共有が可能な仕組みが重要であり、都市や地方など場所にかかわらずリアルタイムなデータを安心・安全に利用するための全国的な情報通信基盤強化についても検討する必要がある。 (4)倫理・ルール AIやロボットの利活用にともなう負の側面にも目を向けるべきであり、責任あるAIの取り組みとして信頼されるAIの技術開発や、AI・ロボット時代に対応した倫理の検討、良質な情報であるか否かよりも「目立つこと」が価値を生み偽・誤情報流布の原因となる「アテンション・エコノミー」への対策、マルチステークホルダーとの対話、国際的なルール形成を主導していくことも重要である。また、制度面ではAIと著作権の関係などについても引き続き国民的な議論が求められる。あわせて、AI等のサービスに関連するデータや情報の信頼性(トラスト)を確保するサービスや技術の開発推進や、考えを同じくするライク・マインデッド・カントリーズとの相互運用性のある認証制度やデータ保護法制を整備すべきである。くわえて、AI等で活用されるデータやサービスの信頼性およびセキュリティを担保するための認証制度・基準等のあり方につき、広範なステークホルダーによる連携の下で検討を行うことが肝要である。 (5)行政DX 行政のDXの促進によって公共サービスの効率化を図ることは、国民生活の質の向上に資するだけではなく、わが国の産業競争力にも直結するものである。2024年6月までのアナログ規制の一括見直しの集中改革期間、2030年までの「アドレス・ベース・レジストリ」整備をはじめ、政府が進めるデジタル行財政改革によって各分野や横断的課題について改革を徹底的に進め、行政手続のデジタル完結を確実に実現すべきである。 特にマイナンバーも含めた国・地方の情報システムについては、負担減とサービスの質向上という観点から、国の強い主導により、ガバメントクラウドを基盤として共通化・標準化を行うとともに、将来的には統合を図るべきである。あわせて、プライバシー保護とセキュリティの確保を徹底しつつ、基盤上においてデータを行政間・産業間で連携・利活用する仕組みを形成することにより、AI等も活用してパーソナライズされた公共・社会保障サービスの提供が可能となるように取り組むべきである。また、ガバメントクラウドにおいては、国産クラウドの積極的な活用も求められる。さらに、産学官のオープンなデータ連携を推進する観点から、国や地方自治体の保有するデータの標準化・オープン化を進めることが重要である。 3.エネルギー エネルギー、特に電力は、国民生活はもとより、AI・ロボット・半導体をはじめとするあらゆる産業の基盤として最も重要である。現在、膨大な計算を要する生成AIの普及により電力消費量は増大し、国際エネルギー機関(IEA)の2024年1月24日公表レポート#3においては、データセンターの消費電力が2026年までに倍増すると推計されており、今後、対応を講じなければ2027年以降もさらなる急増が続くと見込まれている。四方を海に囲まれた島国であるわが国は他国からの電力調達が困難であり、カーボンニュートラルを目指す観点から、需要家の国際競争力の維持・強化に資する安価な電力をいかに安定的に供給するかは最も大きな課題のひとつである。 電力の需要・供給・価格に関する長期的な見通しがなければ、企業が国内投資を判断するうえで大きな困難が伴う。民間企業のみでの対応には限界があり、政府による明確な見通しの策定が必要である。具体的には、生成AI等の技術進展による影響を踏まえつつ、わが国の長期的な産業戦略に対応するエネルギー需要について、2030年・40年・50年といった長期的スパンでの見通しを具体的に示すとともに、それに向けた供給基盤・エネルギー構成・インフラ整備・価格等の道筋を明示すべきである。その際、光電融合技術や量子コンピューターをはじめ革新的な低消費電力技術の貢献等も考慮する必要がある。このような前提で、次期エネルギー基本計画は、半導体・デジタルをはじめ各種産業政策との整合性を取った形で策定されるべきである。 産業の国際競争力の維持・強化に資する電力供給体制の整備に向けて、全国の電力系統の地域間連系線整備や地域内の系統の整備・増強を、費用対効果も勘案して効率的に推進することが重要である。あわせて、燃料調達に関する国の関与を強化するとともに、エネルギーの安価・安定供給をはじめとする諸課題への対応力を発揮できる電力システム改革について議論することが必要である。 電源については、原子力の積極的な推進と最大限の活用が必要不可欠であり、極めて重要である。国が前面に立ち、国民・地域住民による原子力活用の意義や安全性等についての理解を醸成しつつ、原子力規制委員会により安全性が確認された原子力発電所の早期再稼働および核燃料サイクルの確立を図るとともに、リプレース・新増設についても推進することを強く求める。高速炉・高温ガス炉・核融合を含む次世代革新炉の開発・実装に向けて、官民で大胆に開発資金を投入し、スケジュールを大幅に前倒しするなど、抜本的な支援強化が重要である。各国との競争の中、市場づくりも含めてロングスパンでの戦略が望まれる。また、長期にわたる運営を通じた投資回収を必要とする等の原子力事業の特性に鑑み、関係者の意見を十分聞いた上で、投資につながる制度を早期に検討することが重要である。各国において、電力・原子力事業に対する国の関与のあり方は、その成り立ち等に応じて多様であるが、そうした支援や制度を参考にしつつ、わが国において原子力を推進するための国の関与のあり方について検討が必要である。 並行して、再生可能エネルギーの一層の利活用拡大は、カーボンニュートラルのみならず自給率向上にとっても重要な課題である。再生可能エネルギーの主力電源化に向けた一層の供給量拡大と系統網整備に加え、サプライチェーンの強化を図るべきである。再エネ設備の開発を下支えする国内の部品メーカーの支援等を通じて、業界全体のサプライチェーン全体を底上げするような環境整備が望まれる。また、経済安全保障の面でも国内のバイオマス等の資源を最大限活用することが重要であり、地産地消によりコスト効率性の向上を図る形でのエネルギー・インフラの整備の推進も必要である。 火力発電のカーボンニュートラル化や熱源としての活用に向け、水素・アンモニアについても、将来の需給見通しを明確化し、バリューチェーンの構築を含む普及・実装の推進(生産、輸送、貯蔵、利用の各段階におけるインフラ整備等)を図るべきである。 また、ネットゼロ達成に向けたオフセット手段としてのみならず、温室効果ガスの有効活用の観点から、CCS/CCUSやDAC等の炭素除去・利用に関する技術開発や実装も進めていく必要がある。 さらに、電力の安定供給確保策の一環として、系統整備に加え、蓄電池の開発・整備も必要である。国際競争の観点からも蓄電池産業の競争力強化は重要であり、生産基盤・サプライチェーン強化に向けた支援策を継続すべきである。 4.国土・地域 産業政策と国土・地域政策は密接に関係しており、地域の特性を活かして地域経済の成長を牽引する産業を創出し、良質な雇用を生み出す好循環により、地域経済の持続可能な発展につなげていくことが望まれる。 現在、各地域では、少子高齢化・人口減少の加速をはじめ、自然災害の多発・激甚化、急速に進むインフラの老朽化など大きな課題に直面している。そうした中、「第三次国土形成計画(全国計画)」(2023年7月)では、目指す国土の姿として「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲げ、その実現に向けた国土構造の基本構想として「シームレスな拠点連結型国土」の構築を図ることが示されたところであるが、今後、深刻化する課題を真正面から捉え、さらに踏み込んだ議論を行い、国民に対し明確な発信を行う必要がある。今後、デジタル技術等の活用も見据えつつ、行政サービスやコミュニティ、インフラの強靭化および維持・管理、その費用負担のあり方などについて国民的な議論を行い、国土・地域をめぐる避けられない課題に対して明確な方針を打ち出すことが重要である。 その際、産業戦略(産業・エネルギー立地等)と国土・地域開発とを一体的に捉える必要があり、広域的な視点を前提にしつつ、製造業や小売業、農林水産業、観光業、それらを支えるエネルギーをはじめとする各地域産業のあり方と地域独自の資源・人材の活かし方を考えるべきである。各地域の特性に応じて、半導体などの戦略分野における生産を支える電力や工業用水、道路、空港等の産業インフラ基盤の再整備のための投資、経済安全保障の観点から、基幹インフラ役務の安定的提供に向けた官民連携の拡大も必要である。また、災害時の産業活動の継続性の観点から、BCP(事業継続計画)もあわせて考慮することが重要である。今後、このような視点のもとで「産業戦略2040」を策定するとともに、現行の国土形成計画を補完する形で産業・エネルギー版国土形成計画を策定し、次期の国土形成計画においては産業やエネルギーにより力点を置いて議論を行うことを求める。 そして、企業の事業活動の円滑化に資する形での行政の圏域・区域を越えた広域連携を可能とする仕組みの再整備や、国・地方等の行政システムの統一・標準化を含めた地方自治体のDXを図るべきである。老朽化したインフラに対する予防保全による維持管理および更新の効率化に向けても、広域連携や日々進展する技術の活用等が必要である。都市圏と地方が同等の価値創造を行えるような、情報通信インフラの強化や地方からのデータへのアクセスなどのインフラ整備も重要である。 5.自由で開かれた国際経済秩序 多くの資源を海外に依存し、人口減少で国内市場が縮小傾向にあるわが国にとって、他国と同様に大規模な補助金等による囲い込みなどの保護主義的な政策を取ることには限界があり、WTOを含めた自由貿易体制の維持、強化は必須である。自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けて、考えを同じくするライク・マインデッド・カントリーズとの協調とともに、東南アジアやインドをはじめ成長著しいグローバルサウスへの拡大が必要である。強靭なサプライチェーン構築という観点からは、特定国に依存せずリスク分散を行うことが重要である。そして、グローバルなルール形成と標準化の主導を進めるとともに、ルールに沿わない国に対しては相互主義に基づいて対応することも重要である。 通商政策に関しては、データの自由な越境移転など質の高い電子商取引に関するルール形成を実現すべきである。また、CPTPPのような地域的な経済連携協定等を通じた有志国・地域間の連携のもと、経済的威圧に備えることが望まれる。さらに、CPTPP加盟国・地域の拡大にあたっては、現行のハイ・スタンダードな内容を堅持するとともに、引き続き米国の参加へ向けた働きかけを継続すべきである。 また、セキュリティ・クリアランスは、わが国の情報保全の強化に資するのみならず、国際共同研究開発や諸外国の政府調達へ参加する際に求められることがあり、先端分野等の産業・技術基盤強化、ひいては戦略的優位性・不可欠性の維持・確保につながりうるものである。まずは経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度を規定した「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」を早期に成立させるとともに、特定秘密保護法とシームレスに運用し企業のニーズに対応することが重要である。 6.スタートアップ振興/産業の新陳代謝 スタートアップは新しいアイデアや技術によってイノベーションを創出し、社会的課題を解決する重要な担い手であり、わが国が再度産業競争力を取り戻すための切り札である。経団連は、提言「スタートアップ躍進ビジョン」(2022年3月)において、「5年後の2027年までにわが国のスタートアップを数、レベルともに10倍に成長させる」という目標を掲げ、その実現に向けた具体的な戦略とアクションを提言したところである。政府が策定した「スタートアップ育成5か年計画」(2022年11月)でも目標を同じくしており、施策を着実に実行することが重要である。 とりわけ、体系的なアントレプレナーシップ教育の必修化、スタートアップと大企業・大学・ベンチャーキャピタル・政府等との間における人材流動化の加速、大学発スタートアップを通じた研究の社会実装支援、海外の起業家・企業・大学等の誘致、公共調達におけるスタートアップの優先的な活用、各種政府支援策の省庁横断的な連携と情報発信の強化・事務負担の軽減などを進めるべきである。 また、産業全体をより革新的で高付加価値なものへと転換し、持続的な成長を実現するには、産業の新陳代謝による活性化を図ることが重要である。具体的には、サプライチェーンへの影響を最小限に抑えつつ、企業の円滑な入退出や事業承継・統合を促し、その上で付加価値のある新たな産業を生み出す制度設計が必要である。また、補助金・助成金や優遇融資などの保護的施策によりやみくもな延命を図るのではなく、高い成長性が見込まれるスタートアップや中堅企業への集中的な支援にリソースを投入すべきである。そして、事業ポートフォリオ再構築の観点からも、大胆な組織再編法制・税制の整備に継続的に取り組むことが重要である。 7.サプライチェーン わが国産業の強みは、中小企業等を含めた裾野の広い国内サプライチェーンにあり、企業間の緊密な協力体制にもとづく高度かつ高品質な生産・流通体制が競争力を支えてきた。現在、サプライチェーンをめぐっては、人手不足や物価高をはじめ、感染症・自然災害・サイバー攻撃等による途絶リスク、人権問題への対応、デジタルやグリーン等の構造変化、さらには地政学的リスクに対応したグローバルサプライチェーンの見直しなどの複雑な課題が山積しており、サプライチェーン全体の変革によって課題に対応し、競争力を維持・強化することが求められている。 目指すべきは強靭かつ国際競争力あるサプライチェーンであり、デジタル技術やデータを活用したサプライチェーン全体の可視化によって平時・有事の対応を行うことが重要である。その中で、自然災害等に備えたBCP(事業継続計画)対策やサイバーセキュリティの強化を、単独企業を越えて広く業界・産業界の連携で進めるべきである。 特に重要となるのが、サプライチェーン全体のCO2排出量の可視化である。サプライチェーン全体のCO2排出量が把握できないことによってグローバルなサプライチェーンから締め出されることがないよう、Scope1~3のCO2排出量の算定支援や共有ルール策定等に取り組むとともに、経済成長の施策としてサーキュラーエコノミーの実現にも取り組むべきである。 また、経済安全保障上の重要物資に関するサプライチェーンの強靭化に向けて、重要物資の明確化や生産基盤の強化、戦略的備蓄の強化、友好国との連携のもとでの最先端産業の誘致、資源循環に向けた取り組み等を進めることが重要である。 8.知的資本 天然資源に乏しいわが国においては、科学技術・研究開発力、特許・著作権、ブランド力、ノウハウ、ソフトウェア等の知的資本(無形資本)こそが競争力の源泉である。これまで、わが国は「技術で勝ってビジネスで負ける」状況が続いてきたが、いまや研究開発投資等が各国に劣後する中、「技術や知識でも負ける」ことになりかねない状況にある。官民による積極的な投資によって知的資本の強化を図り、市場創造とルール形成を主導することによって「科学技術立国」「知的生産立国」を目指すことが急務である。 科学技術・研究開発力の向上には、まず研究開発投資の量の確保と質の向上が重要であり、2040年代を見据えた長期的な視点で、官民共同での計画とプロジェクトにもとづき投資を拡大することが重要である。また、研究人材については、次項の人的資本で記す通り、博士人材の育成・活躍が重要である。そして、産学官の連携強化が重要であり、基礎研究から社会実装まで一気通貫で研究開発を推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)や、複数の企業・大学・独立行政法人等が協同して試験研究を行うCIP(技術研究組合)などを活用し、事業化や社会実装等を進めるべきである。 国際標準や規制、認証等から成る戦略的なルール形成は、知的資本を活かしたグローバルな市場創出や産業競争力の向上に有効なツールであり、産学官が緊密に連携し、明確なビジョンのもとルール形成の一環として国際標準戦略を策定・実行すべきである。具体的には、国としてグローバルな市場創出が期待される戦略領域を設定しつつ、国際標準戦略を俯瞰的に策定・推進する常設機関の設置や、国際的な仲間づくり、産学官によるエコシステムの形成(企業行動の変容、人材の確保・育成、業界横断的な連携の促進、アカデミア人材に対する評価・支援等)に取り組むべきである。 漫画・アニメ・ゲーム・実写/ドラマ・音楽をはじめとする日本発のコンテンツIPもわが国の重要な資産であり、コンテンツ産業自体に高い成長性が期待できるだけではなく、小売業や観光業をはじめとするさまざまな産業においてもそのブランド力を活用した多元的なビジネス展開への期待が高い。さらに、ソフトパワーを高めることは、わが国の政治外交や安全保障にも貢献する。コンテンツを国の基幹産業と位置付け、クリエイター支援や海外展開等の施策を積極的に進めるべきである。 さらに、各現場が有する技や勘・ノウハウについて、デジタルの時代においても消失させずに伝承できるよう、高い専門技能に対する評価・育成の仕組みを整えることが重要である。 最後に、生成AI技術の発展によって、知的資本は膨大かつ複雑なものとなることが予想される中、生成AI時代の知的資本のあり方やわが国の勝ち筋について議論を行うべきである。特にAI等のデジタル技術を活用して効率的に材料開発を行う「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」で海外の先行を許してしまえば、わが国が強みを有してきた材料産業において競争力を失うことになりかねない。AI開発やデータ連携等において産学官連携による取り組みを強化すべきである。 9.人的資本 AI・ロボットの活用は生産性を飛躍的に向上させるが、価値の源泉は、あくまで人的資本であり、人間がデジタルの力を使いつつ、人ならではのクリエイティビティを発揮することで大きな価値が生まれ、知識資本になる。次世代を担う若者をはじめとする人材をわが国最大の資本と捉え、産学連携・協働のもとでの教育・人材育成や総合的な処遇改善による「人への投資」の促進を通じて、中長期的に価値を高めることが重要である。 とりわけ多様性はイノベーションを生み出すための土壌であり、性別や年齢、国籍などは言うまでもなく、個性や経験、スキル、価値観なども含めて、あらゆる人々の多様性を包摂し、その持てる能力が最大限発揮される環境を整えることが、わが国の強みとなり得る。日本人の海外留学や外国人留学生の受け入れの拡大を含め、産業競争力強化に資する多様な人材の育成に向けた支援を抜本的に強化することも重要である。 (1)人材像 長期的な産業ビジョンと整合性のとれた形で必要な人材像を明確化し、人材戦略を策定すべきである。 今後、AI・ロボット等により一部の労働代替が進むが、それぞれの現場でノウハウを有する職人やエッセンシャルワーカーなどの人材は代替が難しく、さらに重要となる。一方で、先端分野で高い価値を生み出す、グローバルに活躍できる研究者・技術者・起業家などの尖った人材や、多様な人材をマネジメントできるグローバル経営人材、グローバルレベルでのルールメイキングが可能な人材、産官学で技術の目利きを有する人材等の育成も必要である。 また、共感力・異文化理解力、チャレンジ精神、完璧主義からの脱却、トライ&エラーの許容、デジタル技術や金融に対するリテラシー、課題設定・解決能力、文理の枠を超えた総合知等が今後の人材に求められる。 (2)教育 次世代の人材を育てるためには、長期的な産業戦略をもとに求められる人材像を明確化した上で、産学官連携・協働による取り組み等を通じて、初等・中等教育から高等教育、リカレント教育にいたるまでの各段階における教育・人材育成に必要な改革を進めることが重要である。 具体的には、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型教育や、データ駆動型の個別最適な学びを実現できるよう、教育DXの推進に取り組むことが重要である。また、初等中等教育段階からのSTEAM教育や、高等教育における理系・文系に捉われない文理融合・リベラルアーツ教育を通じて、文理を分断した教育からの脱却を図るべきである。そして、日本の高等教育機関は海外の高等教育機関等との教育研究ネットワークを強化し、双方向の留学生・研究者間交流を推進すべきである。社会人の学び直しに関しては、産学協働による教育プログラムの開発・実践等を通じてリカレント教育を推進し、仕事と学びを柔軟に行き来する環境を整備すべきである。さらに、スタートアップの創出拡大に向けて、初等中等教育段階からアントレプレナーシップ教育を積極的に導入するほか、金融経済教育の取り組みをさらに推進し、児童生徒が発達段階に応じて金融や経済に関する基本的な仕組みや考え方を身に付けていくための体制を整備することが望まれる。くわえて、半導体などの戦略分野での生産や研究開発を支えるために、専門人材の早期育成や誘致に取り組むべきである。あわせて、コンテンツ関連の学部・学科・研究科等の設置促進が必要であり、文理融合のカリキュラムの拡充を推進するとともに、国が一定の支援を行う形でのゲームを含む映像向け高等教育機関(アカデミー)の設置についても検討すべきである。学生が社会で必要とされる最先端の知識・スキル等を修得できるよう、産学官連携によってカリキュラム構成や講座のポートフォリオ、研究室のあり方を抜本的かつ柔軟に改革する体制の整備が重要である。特にAI等の日々進化し続ける先端テクノロジーについて、リテラシー・倫理教育を導入するとともに、技術進化に応じて教育内容等を柔軟に見直すことができる仕組みを産学官連携で検討すべきである。 国際語学教育機関の「EFエデュケーション・ファースト」の2023年調査#4において、日本人の英語力が英語を母国語としない113カ国中87位であったように、グローバル人材の育成に向けては英語力が課題となっている。実践的な英語力を養うことに重きを置き、義務教育機関における英語教育のあり方の抜本的な見直しが必要である。 今後、特に重要となるのが、高い水準の専門性・総合知・汎用的能力を有する博士人材の育成・活躍である。企業は、自社が求める人材像に合った博士人材の採用、従業員による修士号・博士号の取得促進に取り組む一方、大学・政府は、大学院教育改革の推進とその実績の周知、博士課程学生に対する経済的支援、ジョブ型研究インターンシップ#5の推進・普及、クロスアポイントメント制度#6の活用拡大等に取り組むべきである。博士人材自身に対しても、企業・政府への就職や起業といったアカデミア以外の多様なキャリアパスを提示するとともに、企業とアカデミアを行き来できる環境を整備すべきである。 学校教育だけではなく、企業の教育訓練も人的資本投資として重要であり、各企業や国全体の生産性向上と賃金上昇に直結する。資本装備率を上げる観点からも、AIなどの最新のテクノロジーを事業や業務の改革につなげられる人材の育成を中心に、階層別の研修や、各従業員向けにカスタマイズしたスキルアップの取り組みなどさまざまな教育訓練メニューが重要であり、支援施策の拡充を図るべきである。 (3)労働 教育とあわせて、構造的な賃金引上げとその原資の確保に向けた生産性の改善・向上が不可欠である。そのためには、労働投入を効率化する働き方改革の「フェーズⅠ」と付加価値の最大化を図る「フェーズⅡ」の継続・深化や、社内外における「円滑な労働移動」の推進、労働力不足への対応、地方経済活性化を担う地元企業・中小企業の生産性の改善・向上に取り組むことが望まれる。 労働力不足が顕著となる中、女性や高齢者、有期雇用等労働者、外国人などの多様な人材が有する能力を最大限発揮できる環境の整備や持続的な育成を進める必要がある。あわせて、職人やエッセンシャルワーカーなど現場業務に従事する社員に対しては、安心・安全に働ける職場環境の確保や待遇改善、各企業・グループ内での育成に向けた官民連携での取り組みや支援が重要である。また、高度人材をめぐる世界的な人材獲得競争に打ち勝つために、企業には競争力を持った賃金・報酬の設定・提示や、適正な評価制度の導入・運用などの整備が求められる。政府は、株式報酬制度など柔軟な報酬制度を支えるための制度整備・規制改革を継続して取り組むべきである。 産業構造の変革に伴う労働力需給の変化、人口減少下における労働力問題に対応し、わが国全体の持続的な成長を実現するには、社会全体での生産性の改善・向上が不可欠である。そのためには、社内外における「円滑な労働移動」を推進し、成長産業・分野や、地方経済の主な担い手である中小企業、社会的機能を維持するために不可欠な職種(エッセンシャルワーカー等)などにおいて、量・質ともに必要な人材のニーズを満たす労働力の確保が重要である。その際、企業には、リカレント教育等の人材育成を含めた「人への投資」の促進が求められる。政府には、雇用のマッチング機能の強化とともに、雇用のセーフティーネットを現行の「雇用維持型」から「労働移動推進型」に移行していくことを求める。 あわせて、事業再編の過程等も含め、違法に解雇された労働者を保護する観点から、解雇無効時の金銭救済制度の創設に向けた検討を加速すべきである。 10.金融資本 産業の成長・発展と金融の改革・強化は表裏一体の関係にある。日本産業の再飛躍に向けて、産業基盤である金融機能の強化を図り、国内投資と企業活動の活性化を実現する必要がある。企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につなげ、家計の勤労所得に加え金融資産所得も増やしていく資金の流れを創出し、わが国経済の「成長と分配の好循環」の実現に取り組むことが求められる。特に「資産運用立国実現プラン」(2023年12月)で掲げられた通り、家計金融資産2,141兆円(2023年12月末時点)の半分以上を占める現預金を投資に向ける「貯蓄から投資へ」の流れを加速させることでわが国の経済の成長を促し、また、若い世代をはじめ幅広い世代に対する金融経済教育の拡充によって、家計の安定的な資産形成を支援すべきである。 あわせて、今後、新たに資金需要が生まれる分野(例:スタートアップや老朽化したインフラの維持管理・更新等)へ家計も含めた資金が循環する取り組みも重要である。これに向けては、わが国の金融資本市場の魅力を向上させ、海外からの専門性の高い人材・企業・資金の流入を促し、世界に開かれた「国際金融センター」としての地位を確立していくことが肝要である。 国際金融センターの実現には、リスクマネーの供給力強化に向けた機関投資家の目利き力の向上や、エンゲージメントを通じた投資先の企業価値向上への貢献等も求められる他、資産運用業やファンドマネージャーの集積が重要であるため、金融規制、在留資格、創業・生活支援、情報発信、税制措置等の施策を継続・拡充することが望ましい。 おわりに 30年の長期間にわたって屈み続けた日本経済が大きく飛躍する千載一遇のチャンスを得ている。そのエンジンとなるのは産業の力強い成長であり、その果実を国民へと分配し、好循環を生むことがわが国経済の持続的な成長につながる。本提言では横断的な産業基盤の強化に焦点を当てたが、力強い産業の形成には、各企業が未来の成長に向けてアグレッシブに挑戦と投資を行い、グローバルに価値を創造していくための経営改革も欠かせない。 世界とわが国が直面する深刻で複雑な課題に対応しつつ、明るい未来を切り拓くにあたって、今日ほど官と民の連携が求められる時代はない。官民連携による日本産業の再飛躍を実現すべく、経団連としても取り組みを続けていく。 【Appendix:戦略分野(候補)】 本項においては、長期産業戦略で定めるべき戦略分野の候補として、(1)AI・ロボット、(2)半導体・光・量子、(3)エネルギー(再エネ、電池、原子力、人工光合成、核融合等)、(4)エンタメ・コンテンツ、(5)観光・食、(6)バイオ・ヘルスケア、(7)宇宙・安全保障の7つを挙げ、簡単に紹介する。各分野の将来像や戦略等の詳細についてはこれまでに経団連が公表した提言を参照されたい。 1.AI・ロボット 昨今、AIが経済成長のドライバーとなっており、とりわけ生成AIの活用が加速度的に進み、市場規模が急拡大している。AIは、あらゆる産業における生産性向上とイノベーションに資するものであり、積極的な活用が必要である。また、人口減少が進むわが国においては、人手不足という課題を克服するためにもAIやロボットの活用による産業DXは不可欠であり、AI・ロボット大国化に向けた産業戦略が求められる。 AIについては、技術開発や実装で他国の後塵を拝する面もあり、豊富なリアルデータやモノづくり技術などわが国ならではの強みを活かしながら、社会全体でAIの開発・活用を進めることが重要である。とりわけ、わが国の最大の強みであるコンテンツ力を最大限に活用し、画像・動画等を生成する「稼げるAI」を開発することが必要である。知的財産等に関するエコシステムやルール形成に向けたわが国の取り組みと戦略的に連動し、画像・動画データの学習、基盤モデルの構築を行うことが欠かせない。 また、AIと組み合わせたロボットの活用も急務である。わが国は「産業用ロボット」において世界をリードしてきたものの、中国等での市場拡大・技術開発が強烈に進む中、改めてわが国の競争力維持・拡大に向けた議論と実装が求められる。 【参考】 「AI活用戦略Ⅱ-わが国のAI-Powered化に向けて-」(2023年10月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/067.html 2.半導体・光・量子 デジタル時代において、あらゆる製品に使用される基幹部品である「半導体」は必要不可欠な存在であり、経済安全保障上の重要戦略物資となっている。かつて日本のメーカーが半導体の世界シェアの半数を占めるなど世界を席巻していたが、現在はシェアを落としている。昨今、生成AI市場が急拡大する中、最先端のAI用GPU(画像処理装置)やそれに付属するHBM(高帯域幅メモリー)の需要が増大し、大きな価値を生んでいるが、それらの設計・生産は米国・韓国・台湾への依存を強めている状況にある。 こうした中で、現在、「半導体・デジタル産業戦略」にもとづきTSMC誘致やラピダス設立などの巻き返し策が図られていることは、経済安全保障の観点からも期待が大きい。今後、「製造装置」や「材料」、「パワー半導体」、「イメージセンサー」、「マイコン」、「NANDフラッシュメモリ」といった強みも伸ばしながら、産学官連携による取り組みの加速が求められる。 特に、生成AI等の普及によりデータセンターの計算処理に係る電力消費が急増する中で、消費電力を削減する取り組みがきわめて重要となる。ステップ3に位置付けられている光電融合技術をはじめ、光・量子、パワーエレクトロニクス等の開発推進による挽回へ長期的な後押しが必要である。 【参考】 「産業技術立国への再挑戦 ~2030-2040年における産業とキー・テクノロジー~」(2022年10月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/089.html 3.エネルギー(再エネ、電池、原子力、水素、人工光合成、核融合等) GX・DXの構造変革を通じた産業競争力強化を図る上で、S+3E(安全性+安定供給・経済効率性・環境適合)を前提にしたエネルギー政策が最も重要である。とりわけ、多大な電力を消費する生成AI等が普及し、それを支える半導体製造にも大量の電力を要する中、安価で安定した電力供給はあらゆる産業の国際競争力に直結する。こうした情勢の変化も踏まえて、再生可能エネルギーの主力電源化、蓄電池の活用、原子力発電所の再稼働・リプレース・新増設、革新炉、人工光合成・核融合等の技術開発なども含め、長期視点での国家戦略が必要である。 【参考】 「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」(2022年5月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/043.html 「産業技術立国への再挑戦 ~2030-2040年における産業とキー・テクノロジー~」(2022年10月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/089.html 4.エンタメ・コンテンツ エンターテインメント・コンテンツ(漫画・アニメ・ゲーム・実写/ドラマ・音楽等)は、国のソフトパワーの源泉であるとともに、創造性とデジタルの時代において極めて高い潜在力を持つ成長産業である。日本はこれまで、世界に誇る優れたコンテンツを生み出し、国境を越えてファンコミュニティを形成してきた。また、コロナ禍を経て日本発コンテンツが世界中で人気を博しており、インバウンドなどへの波及効果も増大している。 他方、韓国などがコンテンツ輸出を国策として推し進める中、環境変化と各国の成長スピードに圧され、わが国はコンテンツ大国としての地位を失う危機に晒されている。単なる娯楽にすぎないとの認識をあらため、コンテンツ産業を国家の最重要戦略分野に明確に位置づけ、クリエイター等の支援と育成、制作・発信・観光拠点の整備、海外展開の推進に向けて力強い産業政策と産学官連携体制を推し進めることが求められる。 【参考】 「Entertainment Contents ∞ 2023 - Last chance to change -」(2023年4月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/027.html 5.観光・食 観光・食は、エンタメ・コンテンツとともに重要なソフトパワーであり、成長分野として期待が大きい。世界経済フォーラム(WEF)が2022年に発表した「旅行・観光開発指数 2021年版」では日本が世界1位を獲得するなど潜在力は大きく、世界的な日本食ブームも追い風に、付加価値をさらに高める戦略が求められる。 観光については、観光地域経営の推進に向けたDMO(観光地域づくり法人)の活性化、需要の拡大と平準化、多様な地域へのインバウンド効果の拡大、持続可能でレジリエントな地域づくりへの貢献、MICE誘致・開催の拡大、観光DXの推進等に取り組むべきである。また、食(農業)に関しては、環境負荷軽減に配慮しつつ、大規模化や高付加価値化、スマート農業の導入等による国内の生産基盤の強化、高品質の農産物・食品輸出に向けた外国市場の開拓、バイオ技術に基づく自給自足システムの構築等を進めることが重要である。 【参考】 「持続可能でレジリエントな観光への革新」(2022年1月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/006.html 「農業の成長産業化に向けた提言」(2023年5月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/033.html 6.バイオ・ヘルスケア バイオは適用しうる分野が多様で裾野が広く、その進化は、環境破壊や資源制約といった社会課題の解決と、持続可能な経済成長を両輪で実現し、社会のあり方そのものを大きく変革する、すなわちバイオトランスフォーメーション(「BX」)をもたらす可能性を秘めている。エコシステムの構築、経済安全保障の確保、グローバルなルール形成、バイオ戦略推進体制の強化、国民理解の醸成等にスピード感をもって取り組むことが重要である。その前提として、健康・医療(レッド分野)、食糧・植物(グリーン分野)、工業・エネルギー(ホワイト分野)など幅広い適用分野毎の特性に応じた施策が必要であり、たとえばホワイト分野では、航空業界の脱炭素に向けたバイオ燃料(SAF)の活用等が急務である。 ヘルスケア分野は、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が国民、医療提供者、行政、産業の全てに「四方良し」の医療を実現し、大きな価値を創出する可能性がある。国民の健康寿命延伸によるwell-being の向上、医療費の効率化と最適な分配、個人に最適な医療の提供、さらには最先端技術開発による産業競争力の強化等に向けて、健康医療データ利活用のためのデータ基盤と法制度の確立が欠かせない。また、医薬品の輸入超過が続く中、新薬の主力となりつつあるバイオ医薬品に関する国内創製力を強化するためには、医薬品産業のイノベーション投資を促進する創薬・生産基盤の整備と、国民皆保険の持続可能性の確保とイノベーションの推進を両立させる薬価制度の構築が求められる。 【参考】 「バイオトランスフォーメーション(BX)戦略 ~ BX for Sustainable Future ~」(2023年3月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/015.html 「Society 5.0時代のヘルスケアⅣ ~ヘルスケアデータの価値最大化に向けて~」(2023年2月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/009.html 7.宇宙・安全保障 現在、人類の活動領域は宇宙空間に拡大するとともに、宇宙システムは地上システムと一体となり国民生活における役割が一層深化している。災害対策や地球規模課題の解決のほか、教育やエンターテインメントまでも含めた多様で裾野の広い市場の急速な拡大が見込まれる。また、わが国政府においても「宇宙基本計画」の閣議決定や「宇宙技術戦略」の策定などの動きもあり、今、わが国の宇宙政策及び宇宙産業は大きな変革の時期を迎えている。「宇宙基本計画」を着実に実行するため、経団連では、令和6年度以降の宇宙関係予算で担保すべき重点事項ならびに制度化や運用改善要望等、産業界として重視する項目について本年3月に「宇宙基本計画の実行に向けた提言」として取りまとめた。 防衛面においては、安全保障環境が厳しさを増す中、防衛産業基盤の整備・強靭化に資する政策を体系的に実施することが重要である。特に防衛産業のサプライチェーンの中で中小企業の役割は大きく、財務体質や後継者・人手不足等によりサプライチェーン断絶のリスクがある。日本全体として重要技術をいかに維持していくかという視点で取り組みが必要である。 企業の取引先や海外子会社などのサプライチェーンを経由したサイバー攻撃も増加傾向にあるばかりか、地政学的緊張の高まりがサイバー空間にも波及する中、サイバーセキュリティは、わが国の国家安全保障上、極めて重要な領域である。こうした状況下、価値創造やバリューチェーンの構築、さらにはリスクマネジメントの観点から、サプライチェーン全体を俯瞰した実効あるサイバーセキュリティ対策を講じることは、すべての企業にとって経営のトッププライオリティである。 【参考】 「宇宙基本計画の実行に向けた提言」(2024年3月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/017.html 「宇宙基本計画に向けた提言」(2023年3月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/019.html 「防衛計画の大綱に向けた提言」(2022年4月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/035.html 「経団連サイバーセキュリティ経営宣言2.0」(2022年10月) https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/087.html 以上 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、不確実性が高く予測が困難な状況の意。 本提言の【Appendix】では、戦略分野の候補として、1.AI・ロボット、2.半導体・光・量子、3.エネルギー(再エネ、電池、原子力、水素、人工光合成、核融合等)、4.エンタメ・コンテンツ、5.観光・食、6.バイオ・ヘルスケア、7.宇宙・安全保障の7つを挙げて、簡単に紹介している。 IEA(International Energy Agency)「Electricity 2024 Analysis and forecast to 2026」(2024年2月) https://www.iea.org/reports/electricity-2024 EF「EF English Proficiency Index 2023年版」 https://www.efjapan.co.jp/epi/ 博士後期課程学生を対象に、大学院教育の一環として行われる長期間(2ヵ月以上)かつ有給のインターンシップ 研究者が大学、公的研究機関、企業のなかで、二つ以上の機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理のもとで、それぞれの機関における役割に応じて研究・開発および教育に従事することを可能にする制度 「産業政策、行革、運輸流通、農業」はこちら Policy(提言・報告書) 総合政策 経済政策、財政・金融、社会保障 税、会計、経済法制、金融制度 産業政策、行革、運輸流通、農業 都市住宅、地域活性化、観光 科学技術、情報通信、知財政策 環境、エネルギー CSR、消費者、防災、教育、DEI 労働政策、労使関係、人事賃金 経済連携、貿易投資 国際協力 地域別・国別 バックナンバー 2024年 2023年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 ページトップへ 経団連トップ 経団連について 経団連とは 会長挨拶 役員名簿 委員会一覧 会員一覧 電子公告 事務局 関連組織 Policy(提言・報告書) 総合政策 環境、エネルギー 経済政策、財政・金融、社会保障 CSR、消費者、防災、教育、DEI 税、会計、経済法制、金融制度 労働政策、労使関係、人事賃金 産業政策、行革、運輸流通、農業 経済連携、貿易投資 都市住宅、地域活性化、観光 国際協力 科学技術、情報通信、知財政策 地域別・国別 会長コメント/スピーチ 会長コメント 記者会見における会長発言 会長スピーチ Action(活動) 月刊経団連 お知らせ ご意見・ご要望 個人情報保護 著作権、リンク等について リンク 表示:パソコン | スマートフォン Copyright © 1995-2024. 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